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ミクロ経済学の参考書のレビューをしてみたり。

もくじだよ↓

 

 ミクロ経済学の力』神取道宏 著
ミクロ経済学の力

ミクロ経済学の力

 

経済学部(あるいは経営学部)への編入学を目指す人がまず最初に目にするブログはおそらくこの「編入対策公式ブログ」でしょうが、そちらでは『ミクロ経済学』芦谷政浩 著 を勧めていたと記憶しています。

しかしその情報!もはや古い!

この参考書、いわゆる「神取ミクロ」は確かに分厚い教科書ですが、何の予備知識も持たとずとも中級ミクロのレベルまで身につけることができるのです。ミクロ経済学では、よく2変数関数の全微分を使うのですが、「神取ミクロ」では2変数関数の全微分の概念をいとも簡単に、かつ分かりやすく解説していました。また、電力会社の限界費用曲線を求めてみようといったコラムや「これだけは知っておこうTPPについて」と題して本格的な経済学による分析をおこなっており、ただの教科書としての価値だけでなく、読み物としても一読する価値があると思います。特に、経済学部への編入学を目指していて、「経済学なんて何の役に立つんだ」と思っている方はぜひお読みください。経済学に対する考え方が180度変わる、といっても過言ではありません。

ただし、例外的に第3章,特に後半は難しいです。ここは少しばかり飛ばして読んでしまっても良いでしょう。(できるだけ理解しようと努めることも時には大事)

また第5章以降はゲーム理論に話を割いており、ナッシュ均衡の解説や典型的なゲームの解説にとどまらず、プリンシパル・エージェント理論やシグナリング理論まで解説されています。ただし典型的なゲーム以外は編入学試験ではあまり出題されないので、この本はどこまで読めばいいのだろうかという問題については読者の判断に任せたいと思います。また筆者が学習した時には、まだ演習書である『ミクロ経済学の技』が出版されていませんでしたので、「演習を使って、学習した内容の理解を深めたい!」という思いがかなえられなかったのですが、今ではこの『ミクロ経済学の力』に沿った演習書である『ミクロ経済学の技』という本が出版されているので、併せて学習すると効果的です...!

ミクロ経済学の技

ミクロ経済学の技

 

 

 ミクロ経済学』奥野正寛 著
ミクロ経済学

ミクロ経済学

 

オススメのテキストです。数式を用いて解説しているので、『ミクロ経済学の力』を読みながら数学の勉強に取り組み、その後に読んでみるとよいかもしれません。数学の勉強をしないまま読むと挫折します。自分は1回挫折し、「このテキストの評価が高い理由がわからないんだけど!!」となっていた記憶があります。しかし、ひとたび数学の予備知識を身につけてしまえばこの本がなぜ高評価なのかが理解できると思います。

特に第3章の一般均衡分析は後述する『ミクロ経済学』芦谷政浩 著 に比べて詳しく解説してあります。いわゆる「芦谷ミクロ」が交換経済における資源配分までしか取り扱わないのですが、この奥野の『ミクロ経済学』は生産も含んだモデルまで扱っています。*1つまり、「芦谷ミクロ」に比べて奥野の『ミクロ経済学』では、より現実に近い経済を分析しようとしているのです。*2

また各章の最後に、それまで議論してきた内容がどのように応用できるのかについて書かれているのがこの本の良いところであるといえます。例えば第3章の第9節では、「所得税法人税といった税を徴収すると、経済にはどのような影響を与えるだろうか?」という疑問に対して、一般均衡分析で学んだことを生かして結論を出しています。

最後に、『ミクロ経済学』は別冊の演習書が優れています。基礎ではありますが、けっこう難しく作られているので、これをこなすことができたら編入学試験なんて楽勝だろうな、と思ったりします。1問1問が重いので、何度も繰り返すような演習方法ではなく、じっくり考えながら確実に解き方をマスターしていく方法が良いと思いました。

ミクロ経済学演習

ミクロ経済学演習

 

 

 ミクロ経済学』芦谷政浩 著
ミクロ経済学

ミクロ経済学

 

これは神戸大の芦谷先生が学部1年生を対象として書いたミクロ経済学のテキストです。ですから、3年次編入学ということを考えると、この本だけでは少し足りないように思います。(入学後に苦労することになる。)よって、できれば消費者の選好の仮定や一般均衡分析については他の本で補っておくと良いかもしれません。(その際には前述の神取や奥野がオススメです。)

特に消費者の選好の仮定については、大阪大で過去(H29年度編入学試験)に出題され、皆壊滅したという話を聞いたことがあります。選好の完備性、推移性、連続性、といった言葉を「聞きなれないな」と思った方はぜひ、『ミクロ経済学』奥野正寛 著 を読んでみてください...!

また芦谷先生の『ミクロ経済学』ですが、自分は言葉による説明が冗長に感じてしまって、この本がオススメかと言われれば、「それなら神取先生の『ミクロ経済学の力』を勧めるかなあ」と答えてしまいます。

ただし、第14章では国際経済学と題し、リカードモデルが扱われているのがいいなと思いました。国際経済学は(なぜか)あまりミクロ経済学のテキストには入ってこないような気がしますので知識をつけておくとよいかもしれません。また、この本を機会に国際経済学に興味を持ちましたら、基礎コース『国際経済学』澤田 康幸 著 をオススメします。ポールクルーグマン国際経済学も一応へクシャー・オリーンモデルのところまでは読んでみたのですが、演習問題に解説がついてなくて泣きました。

基礎コース 国際経済学 (基礎コース経済学)

基礎コース 国際経済学 (基礎コース経済学)

 
クルーグマンの国際経済学 上 貿易編

クルーグマンの国際経済学 上 貿易編

 

 

 『演習ミクロ経済学』武隈愼一 著
演習ミクロ経済学 (演習新経済学ライブラリ)

演習ミクロ経済学 (演習新経済学ライブラリ)

 

 自分はこの本の第1版を購入して演習用として使っていたのですが、少なくとも第1版の購入はオススメしません。この本は『ミクロ経済学』武隈愼一 著 に対応した問題集ですので、このブログで今まで紹介してきた本では扱っていないトピックも演習問題として収録してます。ですからそもそも理論すら知らないという問題に出くわします。よってこの本を単独で購入するよりは、奥野先生の書いた『ミクロ経済学』とその演習書をセットで買うほうが良いです。なぜ「編入対策公式ブログ」でこの本の単独購入を勧めているのか理解できません。

この本は第2版はかなり使いやすくなっているそうですが、確か理論を説いたテキストのほうは結構レベルが高かったような気がします。

理論を説いたテキストである『ミクロ経済学 増補版』武隈愼一 著 は、社会厚生関数の紹介やアローの不可能性定理*3の簡単な証明(2人3選択肢における社会決定ルール)といったものまで載っていて、面白いといえば面白いのですが、編入学試験に合格するという目的のみ達成するということでしたらオーバーワークのように思います。よってその演習書であるこの本も同様かと。

ミクロ経済学 (新経済学ライブラリ)

ミクロ経済学 (新経済学ライブラリ)

 

 

 

 ミクロ経済学 戦略論的アプローチ』梶井厚志,松井彰彦 著
ミクロ経済学 戦略的アプローチ

ミクロ経済学 戦略的アプローチ

 

 伝統的な価格理論を最初に持ってくるのではなく、第1章から「あるパン屋の話」と題してゲーム理論(と独占)から説明している挑戦的な教科書です。また、文字ばかりの単調なテキストと異なり、本の中に挿絵がついていたりストーリー仕立てとなっていたりと読ませる工夫がなされています。

自分は現在読んでいる最中なのですが、すごく面白く息抜きに読めるレベルです。(とはいえ計算用紙くらいは隣に置いておくのが良いかもしれないです笑)

この本を受験生の時に知っていればなぁ...と思いました。多少厳密でなくてもよいから、楽しくゲーム理論の本質をつかみたいという方にオススメです。読んでいる最中ですので、詳しくレビューすることができなくてすみません。読み終わらせた段階で追記しておきます。

 

*1:とはいえ2財,2消費者,2生産者,1生産要素モデルでの扱いです。2財,2消費者,2生産者,2生産要素モデルとなると、なかなか解説しているものがなく、コア・テキスト「公共経済学板谷淳一,佐野博之 著 に記載されているくらいです...

*2:しかし、そもそも編入学試験では交換経済の問題すら見たことがないのですが、これはなぜなんでしょうか...計算量が多くなるからなんですかね...。もし交換経済あるいは生産経済からの出題を見たことがあるよという方がいらっしゃいましたらあとで教えてください。何でもしますから。

*3:定義域の非限定性(特定の人が排除されたりしないこと),社会の選好は擬順序を満たすこと(特に推移律が大事),全員一致性(社会の全員が同じ選択肢を選んだとき、それが社会の選択となること),非独裁性(常にある個人の決定が社会の決定になるようなことはないということ),無関係な選択肢からの独立,という民主主義の基本である5つの条件を満たすような社会決定ルールは存在しない。という主張をした定理のこと。現在は投票が社会の決定ルールとして用いられているが、これは社会の選好を表すものとしては完全なものではない。